サッカーの監督に求められる11の能力

サッカーの監督の評価は難しい。そもそも監督とは、就任した瞬間に「いつか首を切られる運命」に直面するという難しい職業だ。「結果がすべて」とも言われる。そんな監督の能力を、ファンはどのように理解し評価すればよいのか。

本稿では「監督に求められる能力」について考えてみた。以下で取り上げる11の能力を評価軸とし監督を評価してみるのも面白い。

監督に求められる能力

戦術家

一流の監督は、優秀な戦術家であることがほとんどだ。”選手”という手持ちの駒を効果的に活用し、戦況を優位に進める術を知り尽くしていなければならない。頭の中が優秀でなければチームは託せない。

「◯◯◯といえば3-4-3」というように、ひとつのシステムに固執しどのクラブでもそのシステムを採用するような監督もたまにいるが、戦術バリエーションが豊富な監督が望ましいだろう。

ベースのチームづくりが上手い

監督の頭の中がいかに優秀でも、それをチームとして完成させなければ絵に描いた餅だ。自分の思い描く戦術を選手に落とし込む能力が求められる。個々の集合体を組織として有機的に機能させられる”手腕”を持つ監督が良い監督といえる。

その意味では、開幕前の1、2カ月の期間は腕の見せどころだ。主要コンセプトを選手たちに植え付け、シーズンを通して成長する下地をつくる必要がある。選手に適切なタスクを与え、シーズンを通じて選手自身が前向きにタスクを実践し能力を存分に発揮すれば、組織としては理想的な歩みをみせるだろう。選手に飽きさせないトレーニングの質ももちろん重要。

魅力的なサッカーを構築可能か

サッカーが「娯楽」でありお客さんがいて成り立つものである以上、エンターテイメント性は重要な評価基準だ。魅力的なサッカーを構築できる監督はそれだけで評価の対象となりうる(なおかつ結果も手にできる監督は理想的)。

いま現在世界的に評価が高いのは、ペップ・グアルディオラやサッリ。ラ・リーガでは、ベティスのキケ・セティエンが評価を高めており、(あまり成績が伴わないが)パコ・ハメスもスペクタクル信奉者で耽美的戦術を好む。

ただしこうした監督を招聘するうえでは、フロントは覚悟を持つ必要がある。

人心掌握

選手はプライドが高い生き物。選手のハートを掴むの能力は監督にとって必須だ。アンチェロッティは、人心掌握においては一流と見られており、穏やかな人柄で選手から支持を集める(バイエルンでは失敗したが)。ジダンは選手時代の栄光と泰然とした性格から、我が強いレアル・マドリードの選手たちからも尊敬を集め、シンプルな言葉で良質なパフォーマンスを引き出すことに長けている。

特にメガクラブの場合は人心掌握能力は高くなければやっていけない。ロッカールームの重鎮たちとうまく向き合い、チームのパワーバランスを整えることも大切な仕事のうちだ。

モチベーター

言葉や振る舞いによって選手を熱くさせ、士気を高めてピッチへ送り出し、最大限のパフォーマンスを引き出せる監督は一流のモチベーターといえる。その代表格はシメオネ。時に過激な言葉で選手を奮い立たせるメンタルマネージメントの手腕は一級品だ。

柔軟な姿勢

実はシーズン通してひとつの戦術パターンを突き詰めてタイトルを獲得するというのは相当困難。各国リーグ戦王者のシーズンを振り返ってみても、前半戦と後半戦でシステムや選手起用の色が多少異なることは珍しくない。

プランAがあったとしても、刺激を失って質が低下したり研究・対策されたりしたら、固執せず変更したほうが吉と出るかもしれない。プランBやCを積極的に取り入れられる柔軟な姿勢は持つ監督であれば好ましい。

采配が上手い(選手への指示/選手交代)

リーグ戦を戦ううえでは、総得点を増やし総失点を減らせば順位は高くなる。これを実現するのが監督の仕事で、年単位での質が求められる。

とはいいつつも、一戦一戦を大切にし目の前の試合で勝利をもぎ取ることで、勝ち点は積み重なり、順位は上がっていくことは忘れてはならない。その意味で「采配力」は重要だ。ピッチ上で起こっている事象を的確に読み取り、選手への指示や3枚の選手交代で流れを引き寄せる能力が求められる。勝負どころを見極める”眼”を持っていなければならない。

采配を誤ったことがない監督などいないが、采配が上手か下手か、積極的か消極的かは、監督ごとに個性が出る。もちろん勝負度胸を持っていなければ話にならない。

ちなみに「監督の仕事は試合開始前に7〜8割は終わっている」といわれる。とすれば「采配」は残りの2〜3割の仕事となる。

選手を成長させる

選手の適性や長所を的確に見極め、一流に成長させることができるかどうかも重要な評価基準。ペップは、バイエルン監督就任直後J・ボアテングに対して、ここ数年の試合映像を見せて改善点を洗い出したという。またラームをボランチにコンバートするという大胆な発想も取り入れた。この例のように、様々なアプローチで選手の成長を促すことができる監督は良い監督だ。

若手の起用に積極的

若手の器用に積極的であることも評価の対象となりうる。もちろん起用するだけでは駄目だが。経験と自信に欠ける若手選手のパフォーマンスを最大限引き出せる監督は良い監督だ。

トラブルが少ない(解雇リスクが少ない)

フロントは中長期的ビジョンを持って監督を招聘する。解雇リスクが高い監督は呼びたくない。フロント、マスコミ、選手とのトラブルが少ない監督が望ましい。常にプロフェッショナルな姿勢で仕事に徹し、余計な緊張感を招かない監督は信頼が置ける。

代表監督特有の資質

クラブの監督と代表監督は違う。代表監督の職務を託すにあたっては、特に高度な経験を積んでいる必要があり、代表監督経験およびW杯采配経験の両方を持ち合わせている監督が理想だ。

ナショナルチームを率いるうえでの問題のひとつが、試金石となる”真剣勝負”の舞台が少ないことが挙げられる(親善試合では相手が緩い)。真剣勝負が少ないと、チームの隠れた問題を炙り出しそれを改善に導くかのが難しい。負けて改善点を見つけるのは簡単だが、勝利時に目立ちにくい改善点に着手するのは簡単ではない。その点においては、クラブの監督の仕事よりも難しいだろう。

それと、本大会から逆算してチーム作りをする必要がある。いかにしてピークを本大会に持っていくかだ。選手を固定し成熟させすぎると、逆転が露呈したり、研究されたりする。特にワールドカップでは、本大会内でのスタメン奪取やシステム変更もありえる。柔軟な勝負師でなければならない。

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