ポジショナルプレーという概念を平たく解説

ポジショナルプレーとは

ポジショナルプレーとは

ポジショナルプレーとは、選手たちがより良いポジショニングを取りながらゲームを進めていくという概念だ。サッカーという偶然性の強い競技において、構造化された(計画に沿った)プレーをしていくために設定されるガイドラインである。

革命者グアルディオラ

革命者はペップ・グアルディオラ。当代最高の監督と称されるグアルディオラが現代サッカーに定着させたといえるだろう。ちなみに彼が発明したわけではなく以前から形はあったが、グアルディオラがバイエルン・ミュンヘンの監督となった2013-14シーズンあたりから一般的に認知され言語化されるようになった。

グアルディオラはバイエルンの練習場に4本のラインを引き、5レーン理論(後述)の定着を目指した。またアラバロール(後述)と表現される、サイドバックが大外のレーンではなくハーフスペースに移動しインサイドハーフとして振る舞うスタイルも一般化させた。どちらも、ポジショナルプレーという大枠概念の下地があってこその戦術といえる。

ポジショナルプレーの具体例

5レーン理論

ポジション毎の役割を選手に理解させる目的で、ピッチを縦に5分割する。概略としては、ひとつのレーンに複数の選手が重ならないようポジションを取ることが推奨される。具体的な戦略は監督により異なる。

[2-3-1]のビルドアップ

ビルドアップ時に[2-3-1]のポジショニングをとることで、複数のパスコースを確保する考え方。

三角形を形成

小さな三角形を形成することで、パス回しがスムーズになる。またボールを奪われた時に相手を取り囲みやすいので、ネガティブトランジション(攻→守への切り替え)時にも有効。

アラバ・ロール(偽サイドバック、ファルソ・ラテラル)

ペップバイエルン時代のダビド・アラバの役割が由来。サイドバックの選手がインサイドハーフ(ボランチ)の役割をすることで、ビルドアップ時に前後のリンクマンの役割を果たし、守備時はカウンターアタックの防波堤となる。「偽サイドバック役」はその役割上MFとしてのテクニックとビジョンが必要となる。

ポジショナルプレーの原則

ポジショナルプレーの原則は、「優位性を保てる状態で」味方からのパスを受けることができるポジションを取ること。ここでの優位性とは以下の3つ。これら優位性を最大限活かすことを目的に、ガイドラインが設定されていなければならない。

量的優位性

数的有利である優位性。アラバロールは中盤に数的有利をもたらす。アンカーの2センターバック間落ちは、最終ラインに数的有利をもたらす。

質的優位性

選手の特性に依存する優位性。マッチアップする相手に対して能力的に上回る選手(マンチェスター・Cでいえばザネ)がいれば、あえてそこを孤立化させてアイソレーションで崩すといった戦略がとれる。

位置的優位性

「センターバックとサイドバックの間」や「死角」など、敵の迷いを生むポジションでボールを受ける優位性。

ポジショナルプレーと選手の役割の変化

選手の役割が明文化される

ポジショナルプレーの概念が広まったことで、そのポジションにおいて何をすべきかという選手個々の役割が整理された(より言語化された)。

ポジショナルプレーを志向する監督は、目指すサッカーを具現化すべく、ピッチを分割し「このゾーンでは各選手が何をすべきか」「そのゾーンにいつ入るのか」ということを具体的に提示する。「この選手がここに動いた→別の選手はここに動く」といったチームとしての連動性を明文化することで、攻撃においての崩しの方程式がより計画的なものになる。「阿吽の呼吸」は試合中何度も再現できる。

意思決定の減少

役割が明文化されることで、意思決定の機会が減少する。首を振って周囲を見渡し認知するという動作そのものの回数も減り、一回の動作における負担も減る。ポジショナルプレーの指針があれば、ある程度どこに誰がいるかがわかっているからだ。

意思決定の機会が減少することにより、意思精度およびプレー精度の向上が期待できる。

ポジショナルプレーを志向するチームにおいては、2000年代的な意味でのゲームメーカーは不要なのではないかという見方がある。チーム全体でゲームメイクできるようになったからだ。近年中盤の底に起用される選手の特徴として、ゲームメイカーとしての才能が溢れる選手よりも、正確なキックと一定レベルの判断力が備わった守備力の高い選手が重用される傾向にある。(マンチェスター・Cでいえばフェルナンジーニョ)

創造性は奪われない

ポジショナルプレーの概念は、個々のクリエーティビティー(創造性)を奪うものだという意見がある。だがポジショナルプレーを標榜する優れたチームは、むしろ個々の創造性が存分に活かされている。

ポジショナルプレーは選手を戦術で縛るものではなく、選手の強みを最大化するための理論だ。ポジショナルプレーの本質は、選手たちの創造性をより効果的に発揮させるための「配置・タイミングの徹底」である。

その他

ポジショナルプレーとポゼッションの関係

ポジショナルプレーを標榜するチームは、ボールポゼッション率が高い傾向にある。

ボールを保有することは、能動的に陣形を最適化することが目的のひとつだ。グアルディオラのチームは、陣形を最適化するためにボールを保有する。パスは手段でしかない。ボールの周囲に作り出した局地的な数的優位を利用してパスを繋ぎ、相手を後手に回らせて自陣に押し込んでいくのがマンチェスター・Cの特徴のひとつだ。

守備(ネガティブトランジション)においても強みとなる

ポジショナルプレーの徹底はその性質上、ボールを奪われた瞬間に守備にいくための最適な配置になっていることが多い。よって守備の面でも強みとなる。ポジショナルプレーは単にポゼッションにおける強みを追求した理論なのではなく、トランジション局面でも有用であると理解すべきだろう。

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