レアル・マドリードの中盤に君臨するドイツの精密機械、トニ・クロース。その正確無比なパスと安定感から「ドイツ製メトロノーム」とも評される。若くしてありとあらゆる主要タイトルを獲得した世界有数のタレントだ。本稿ではクロースのプロフィールや略歴、プレースタイルをチェックしていく。
目次
プロフィール
本名 | トニ・クロース(Toni Kroos) |
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国籍 | ドイツ |
生年月日 | 1990年1月4日 |
身長 | 183cm |
体重 | 76kg |
ポジション | MF |
利き足 | 右(両足) |
プロデビュー | 17歳 |
略歴
クラブでの活躍
バイエルン・ミュンヘンで17歳の頃にデビュー。デビュー戦で18分間で2アシスト(いずれもクローゼのゴール)を記録し衝撃デビューを飾った。その後は出場機会に恵まれなかったが、レバークーゼンにレンタル移籍しブレイク。バイエルンに復帰後着々と評価を高め、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝でもアシストを記録するなど順調な歩みを見せる。ペップ・グアルディオラの元でも1年プレー。
2014年に、バイエルン首脳陣からの評価の低さを理由にレアル・マドリードへと移籍(この移籍はバイエルン内では大失敗と捉えられている)。移籍初年度から中心選手として活躍し、世界的なMFとしての評価を確立する。CL三連覇にも主力として貢献。「レアル・マドリード史上最高のドイツ人選手」との評も。
代表での活躍
2007年U-17ワールドカップ(W杯)に主将としてドイツを3位に導き大会MVPを受賞した。2010年南アフリカW杯のメンバーに選出され、その後は次第に代表の主力に。2014年ブラジルW杯では準決勝ブラジル戦でMOMの活躍を見せるなど高パフォーマンスを連発。MVP級の働きを見せる。2016年EUROでもベストイレブンに選出される。
プレースタイル、特徴、強み
安定的ゲームメーカー
ドイツ人らしからぬ技巧派。レアル・マドリードでは右のインサイドハーフを担当。中盤低めに落ちてマルセロを高い位置に押し上げる「インサイドハーフ落ち」で、ポゼッションサッカーの中核を担う。世界最高レベルの高いパス・トラップ技術を持ち、プレッシャー強度の高い試合でもぶれない安定感も強み。長短問わず極上のパスで試合を作り、パス成功率はほとんどの試合で90%台を記録する。
世界最高レベルの認知の早さ
認知の判断が早く、即座に縦パスを刺すことができる。レアル・マドリードでもその能力は活かされるが、前線が流動的なドイツ代表ではその強みをより存分に活かしている。また、相手選手にタイトに寄せられても、味方を素早く発見しボールを預けられる。
ロングパス
左サイドからの崩しが多いレアル・マドリードだが、クロースの対角パスで逆サイドに展開するのもパターン化している。長距離でも逆サイドの選手の足元にピタリとパスがつけられる。
プレースキッカー
コーナーキックと味方に合わせるフリーキックのキッカーを担当。モドリッチ他多数の良質なキッカーを揃えるレアル・マドリードだが、より高速かつ正確なキックが蹴れるクロースがキッカーとして採用されている。S・ラモスとのホットラインは強力。
正確無比なシュート
キック技術があっても、シュートチャンスでそれが発揮できない選手は多くいるが、クロースはそれとは無縁。ゴールにパスするように落ち着き払った正確なシュートを放てる。代名詞はインサイドキックで針の穴を通すようなグラウンダーで転がすシュート。簡単に見えて難しい。その軌道の美しさは芸術品だ。ボレーシュートも得意。
怪我・故障への耐性
屈強な体格ではあるが、あまりコンタクトプレーに無理をするタイプではない。よりシンプルなプレーを好むため、故障の心配が少なく、シーズン通しての稼働が見込める計算しやすいプレーヤーだ。
弱点(課題)
守備
守備に弱点を抱える。自陣深くまで戻る、スペースを埋める、相手選手へのパスコースを遮断するといった「点を与えないための守備」はあまりうまくない。安全第一で相手選手と自軍ゴールの間にポジションを取ることが守備の基本原則だが、クロースは希望的観測に基づいた判断からか、攻め残りの位置でボールウォッチャーとなる傾向がある。
そうした守備ビジョンを持つためか、レアル・マドリードでは相手陣深くまでプレッシングにいく役割を担っており、帰陣守備は味方に任せることも。またディレイの判断が悪いため、不用意に相手にチェレンジし警告を受ける傾向にある。ただし、イーブンな状況でのボール奪取やタックル技術、プレッシングでのボール奪取能力はまずまず。
おまけ
称賛
ハインケスは「クロースの可能性は無限大」と評価し、クライフも2014年ブラジルW杯での活躍を絶賛した。バイエルン時代のチームメイトの宇佐美貴史は「生まれながらの天才」と評している。
レアル・マドリードの宿命のライバルであるバルセロナの伝説的プレーヤー・シャビも、「なぜバルサは取らなかったのか?」と称賛した(カソルラ、シルバ、モドリッチ、ラームと合わせて称賛した)。