日本代表(西野ジャパン)のロシアワールドカップを振り返る

4年に1度のお祭り、2018ロシア・ワールドカップ(W杯)も、残りあとわずか。我らが日本代表は、グループステージ(GS)突破とベスト16敗退という結果で大会を終えた。改めて西野ジャパンの歩みと戦いぶりを振り返ってみよう。

ハリル解任から本大会まで

まずは改めて、ハリルホジッチ監督が解任された大事件を振り返る。

筆者は当初、ハリルホジッチ解任には反対だった。直近10試合でほとんどポジティブな戦いを見せられていないことは事実だったが、その反面豪州戦(アウェー)、UAE戦(アウェー)、豪州戦(ホーム)のように戦術的に相手の長所を消すサッカーは仕込めるタイプの監督だと思っていた(実際に結果も出た)ので、本大会を観てみたかったからだ。「親善試合はテスト」という論拠もわからなくはない。

もうひとつの理由として、今更解任は遅いだろうと思ったから。ここまで我慢した以上、続投がベターだと思っていた。

どちらかといえば「消極的支持」ではあったが、とにかく解任には反対だった。

ただし、選手の求心力低下は透けて見えていたのも動かし難い。「チーム内部の状況がわからないので何とも言えないが、場合によっては『避けられない解任』だったのかもしれない」という考えも持っていた。

いずれにしても、今回の解任劇は起こりうる範疇には属していると思っていたので、別に激怒も発狂もしていなかった。「様子を見てみよう」ということで、西野ジャパンに大きく期待もしていた。

西野ジャパンの本大会まで

初陣ガーナ戦では3バックを試した。結局本大会では明確な3バックは披露しなかったので、今思えば時間の浪費だったようにも思えるが、ビルドアップ時のメカニズムとしての3バックは本大会でもしばしばみられたので、その意味ではトライは悪くなかったのかもしれない。

スイス戦の時点で、一定レベルで骨格は出来上がっていた。ただし、スタメン選考がいまいちだったので完敗。このスイス戦を改めて振り返ってみても、西野ジャパンの戦いぶりは、個々の選手の戦術理解力・実行力に依存していたと言わざるを得ない。

パラグアイ戦で、選手の選考も含めたベストな戦いぶりを確認し、本大会へと向かうこととなった。

本大会を振り返る

コロンビア戦

コロンビア戦は、試合開始直後のPK&退場が試合に大きく影響した。それが勝因だったと言っても差し支えないだろう。

ただし、それは自分たちの攻撃から生まれたものであり、完全なラッキー勝利ではなく、それも実力だ。相手がひとり少なくなってからの戦いぶりに課題を残した。

セネガル戦、ベルギー戦

順番は前後するが、この2試合が西野ジャパンの戦いぶりとしてはベストに近いと思う。

「縦に早く」「デュエルで負けない」といったハリルジャパンの概念は残しつつ、ポゼッション局面もなるべく増やし主体的にボールを回しながらゲームを動かした。戦術理解力の高いサイドハーフの乾と原口の献身のよってサイドに蓋をし、中央も割らせなかった。攻勢に出れば、サイドバックの長友や酒井宏樹は勇猛果敢に高い位置を取りに行き、サイドハーフとのコンビネーションも良質。柴崎は長短織り交ぜたパスで局面を動かし、長谷場は常に気の利いたポジショニングでカウンターの芽を摘んだ。

攻守のバランスにおいては、歴代の日本代表でも屈指の安定感を誇ったと思う。それを2試合表現できたのは大きかった。(もちろん課題も出たが…。)

ポーランド戦

ポーランド戦は、スタメン6人を入れ替えるギャンブル采配。結果的には吉と出たが、危なっかしいことこの上なかった。

最後の10分の談合は賛否両論。あのような戦いを選択した以上、賛否が生まれるのは宿命なので、意見を戦わせても仕方がない。「決勝トーナメントに進出するための戦略のひとつ」という賛成意見と、「このような戦いを見たかったわけではない。エンタメ的に失格。客に申し訳ない。」という反対意見。どちらも正しいので、喧嘩しても仕方がない。

ただ、この戦い方は日本サッカーが成長した証拠とも取れる(ドーハの悲劇は時間稼ぎを怠ったことに起因する)。議論になった事自体が良い事と捉えたい。

改めてハリルホジッチ解任を考える

大会を終えた後で、ハリルホジッチ解任に対する筆者の考えも変わってきたので、一応書いておく。

解任直前のマリ・ウクライナ戦の頃には、選手から口々にハリルホジッチに対する不信のコメントが漏れ始めていた。

本田「ハリル監督のときは前向きな議論がなかった」
吉田「一方的にやり方を聞いて、それにトライする」
槙野「選手同士で話し合うことを禁じられていた」
原口「縦に、縦にという一辺倒だった」
岡崎「縦、縦と言うだけで明確な戦術はなかった」
大迫「(ハリル監督の指示通りの)縦に速い攻撃だけじゃ無理。1本の(長い)パスだけで点は取れない」
山口「翔哉のサイドにずっと蹴れ、蹴れ、蹴れと言っていた。そんなに全部蹴れないし、やっぱりタイミングを見ながらやっていかないといけない。こっちは右サイドで時間を作りながらやっていこうという話をしていた。そのなかで蹴れ、蹴れという指示が飛んでいた。そことの食い違いはあると思う。蹴っちゃうとサコ頼りになってしまう。毎回毎回サコも勝てるわけじゃない。そうなると厳しくなってくると思う」
森岡「(監督と選手の間にプレーイメージのギャップがある現状については)それは観ていても分かると思いますし、感じることも多い」

また、後のインタビューで明らかになるが、乾も「基本的に縦に速いサッカーをしないといけなかった」とコメントしている。

これらコメントが出てしまっている以上は、解任は十分起こりうる範囲内ではあったと改めて思った。(ちなみに歴代の日本代表でここまで監督不信のコメントが出ることは稀。)

ハリルホジッチの志向するサッカーや選手に求めること自体は正しかったと思うが、それが実際のサッカーに現れていなかったこと、「親善試合はテスト」という戦略を選手と十分に疎通できていなかったこと、それもまた監督の手腕に含まれる。前述の選手のコメントは、選手の理解力の欠如のせいなどではなく、これらコメントが漏れている事自体がハリルジャパンそのものの不安定さを示していたと解釈すべきだろう。

西野ジャパンに変わり、西野新監督はまず選手が抱えていた不満を取り除くことに注力した。そのうえで、ハリルの概念も残しながら、手探りで戦術の最適解を模索した。よく短い期間で探し出したと思う。伊達にJリーグ最多勝利監督ではなかった。

日本サッカーの現状と課題

「日本代表は十分世界と戦える。弱くない。」それを示せたことが最大の収穫か。

課題があるとすれば、個々の選手の戦術理解力に依存した戦い方だったようにみえたこと。それを再現性を持ってチームに落とし込む方法を体系化することが求められる。

加えて、プランB、プランCといった戦術の幅をもたせることも必要。ベルギー戦では、フェライニ投入で高さを効果的に使い圧力を強めた相手に対抗する策がなかった。

また、守備に大きな戦術的破綻はみられなかったが、それでも失点が多かったことも大きな問題点だ。ミスを無くすことと個の能力を高めることも課題か。特に優秀なGKは育てることが求められる。

おまけ

長谷部誠、本田圭佑、酒井高徳が代表引退の意向を示した。お疲れ様でした。彼らの分まで、日本代表に強くなっていってほしいと切に願う。

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