なぜJリーグ勢はACLで勝てないのか、理由を探る

例年の恒例ともなりつつあるが、今シーズンもAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)におけるJリーグ勢の苦戦が続いている。

2007年大会を浦和レッズが、2008年大会をG大阪が制して以来、なかなか決勝にもたどり着けなかったJリーグ勢。昨シーズンは久しぶりに浦和レッズが優勝したが、今シーズンの出場4クラブも出足は鈍い。

なぜJリーグ勢はACLで勝てないのか。その疑問の答えを探る。

Jリーグ勢がACLで勝てない理由

実力面での理由

単純に力不足であるという指摘は多い。もちろん無視するわけにもいかない。

フィジカルサッカーとの相性が悪い

説得力:★★★★★

Jリーグでの戦いとACLでの戦いはまったく異なる。選手の特徴も違うし、戦術(あるいはサッカー観)もまるっきり別物だ。

Jでは多くのクラブが組織的なサッカーを志向している。選手は比較的小柄で、スピード、テクニック、アジリティに優れた選手が多い。チームとしてどう守りどう攻めるかをテーマにシーズンを戦う。

攻撃面では、相手の守備組織をいかにパスやドリブルで崩すかに重きが置かれる。速攻にディレイで対応されれば、丁寧に作りなおしコンビネーションで崩しにかかるサッカー観がある。守備では、こうしたコンビネーションでの崩しにいかに組織で対応するかを柱としている。ディレイで相手の攻撃を遅らせることやブロック構築を重視する。

こうした考え方に問題があるとはいわないが、違ったサッカーを志向するクラブが少なすぎる。攻撃を個人能力に依存したサッカーやパワープレー重視のサッカーは少なく、それらに対抗する守備のレベルもなかなかあがらない。

中国や韓国は、スーパーなFWに攻撃を任せるサッカーも珍しくない。あるいはクロスに競り勝って得点するフィジカルサッカーか。屈強な選手が強引に身体をぶつけてくるラフなスタイルが伝統的で、上位クラブでもそうである。

こうした攻撃は、Jリーグ勢のディレイ守備をごりごりと突破してくる。ACLで中国超級リーグ勢やKリーグ勢と戦う時には、球際の強さで負ける傾向にある。日本サッカー全体の問題点としてつきまとっているフィジカルサッカーへの弱さ(守備強度の低さ)が、より浮き彫りになるのがACLの舞台というわけだ。空中戦や対セットプレーで脅威を感じる試合も散見される。

資金面の差=外国人選手の質

説得力:★★★☆☆

巨大なマネーパワーでアジアを席巻する中国超級リーグのクラブにはスカッドの質で負ける。自国選手の質であればJクラブも負けないが、外国人選手については差があるといわざるをえない。

アジアにおいては多くの国で、ハードワークは自国選手が担当し、試合を決めるのは外国人FWというチームづくりを採用するクラブが多い。それはJリーグも含めてだ(すべてではないが)。

Jクラブの外国人と中国クラブの外国人の質の差が勝敗に直結するケースもあるだろう。

ACLそのものの厳しさ

ACLそのものの厳しさにも触れておこう。ただしここで挙げる理由については、他国も条件は同じであるため説得力にはやや欠ける。後述する「経験の差」「優先度の低さ」とあわせて考えるべきだ。

開幕に向けてコンディションが整わない

説得力:★☆☆☆☆

どのクラブもACLを万全なコンディションで迎えられない。Jクラブの特徴として、第1節、2節が弱い。

2018年の日程をみてみよう。J1は2月23日〜12月1日だ。富士ゼロックススーパー杯は2月20日。それより前は天皇杯からのオフ&準備期間、後ろはクラブW杯があるため、この日程はずらしにくい(天皇杯決勝を12月下旬にすれば、少し緩くなるが)。

ACL開幕は1月16日。例年この時期だが、毎シーズン各クラブのコンディションは仕上がっているとはいいづらい(逆にACLのプレーオフから勝ち上がるようなクラブのほうが仕上がりがよくなる)。

日程がタイト

説得力:★☆☆☆☆

基本的にACLは平日開催であり、その週は2試合戦うことになる。日程はタイトだ(W杯イヤーはより過密)。

移動、環境の厳しさ

説得力:★☆☆☆☆

ACLは最大約10時間の長距離移動をともなう。時差、気候、文化の違い対応するのは難しい。

経験の差

ACLは経験がものをいう。前述の戦術的な特徴の違いやコンディショニングの難しさなどは、経験してみなければなかなかつかめない。

出場クラブがシーズンごとに替わる=経験の差

説得力:★★★☆☆

他国と比べると、Jリーグは上位クラブと下位クラブのレベル差が小さく戦力が均衡している。昇格即優勝やACL出場組の降格も起こっており、確実にACL圏内に入ることが保証されているほど抜きんでて強いクラブはない。

それに対し他国リーグのクラブは戦力に差があるため、多くのシーズンで連続出場することになる。ACLの経験値は高い。中国超級リーグは広州恒大、北京国安。KリーグはFCソウル・蔚山現代・全北現代・浦項・水原三星。豪州はシドニーFC。タイはムアントンとブリーラム。これらクラブはACLではお馴染みの常連でかなりの回数出場している。

Jの出場クラブの直近の出場実績は、Kリーグや中国超級リーグのクラブに劣る場合がほとんど。ACL経験値においては、Jクラブは相対的に不利である。

優先度の低さ

JリーグとACLでは、リーグのほうを優先するクラブが多い。リーグとACLを両立できる戦力を十分に確保できず、結果としてインセンティブが低いACLのほうを捨てるという決断に至る。

Jリーグのほうが賞金が魅力的

説得力:★★★★☆

金銭的なインセンティブは低い。ACLの賞金の低さは近年かなり改善傾向にあるが、DAZN効果でJリーグの賞金もかなり増えたので、各クラブやはり優先度はJリーグのほうが高い。

以下ポイントを示しておこう。Jリーグ、ACLともに勝利給は省いている。

Jリーグ順位 Jリーグ優勝賞金 Jリーグ理想強化分配金 合計
優勝 3億円 15億5000万円 18億5000万円
2位 1億2000万円 7億円 8億2000万円
3位 6000万円 3億5000万円 4億1000円
4位 0 1億8000万円 1億8000万円
ACL成績 ACL
賞金
ACL
ステージ参加賞
日本サッカー協会
報奨金
合計
優勝 4億5000万円
(+クラブW杯賞金)
4400万円 8000万円 5億7400万円
(+クラブW杯賞金)
準優勝 2億2500万円 4400万円 8000万円 3億4900万円
ベスト4 0 4400万円 8000万円 1億2400万円
ベスト8 0 2200万円 4000万円 6200万円
ベスト16 0 880万円 1000万円 1880万円

「ACLそのものの厳しさ」の節で示したとおり、ACLはコンディショニングが難しい。ターンオーバーは必須だ。どちらかを優先せざるを得ない。JリーグとACLを天秤にかけるとなると、Jリーグの賞金を望んだほうが効率がよいという判断は理にかなっている。

もちろんわざと負けるほどではない。「ACLは罰ゲーム」「負のインセンティブがある」という表現はたまに聞くが言いすぎだと思う。ACL出場組の降格も過去にはあったが稀なことだ。

リアルな感覚として「ACLはリーグ戦の負担にならない程度に戦力を落として挑み、勝てれば御の字、負ければリーグ戦専念。ベスト8に進出したら本気になる」というような視点のクラブが多いと思われる(もちろん各クラブの総戦力やビジョンによっても異なるし、現場でそういう空気が蔓延してしまうと勝てないので監督も雰囲気は締めるはずだが)。

ちなみに欧州CLに関しては、出場するだけで、あるいは1勝するだけでも営利的にかなりのうまみがある。ACLとCLはまったく別物だ。

Kリーグの賞金の少なさ=本気度

説得力:★★☆☆☆

逆にKリーグは賞金が少ない。優勝賞金が約4500万円だそうだ。価値が薄い国ほど国際タイトルに執着心を持てる。

結果として、特にグループステージでは、Jリーグ勢はリーグ戦でベストメンバーを組みACLでサブメンバーを多少含めるのに対し、Kリーグ勢は逆になる場合が多い。

Jリーグ内の戦力が均衡している

「経験の差」「優先度の低さ」の節で示したこととかなり関連するが、わけて書いておこう。

Jリーグは実力差がかなり拮抗している。リーグ内の戦力均衡はエンタメ的には強みでJリーグファンにとっては魅力だが、ことACLにおいては勝てない原因にもなっている。

戦力の分散

説得力:★★★★☆

他国リーグはACLに出場できる強いクラブが決まっているのに対し、Jリーグはばらける。経験の差を生むだけでなく、戦力が分散していると解釈することもできる。

「ACLの最強はKリーグのクラブだが、アジア最高のリーグはJリーグ」とはしばしば聞く表現だ。

コンディショニングの難しさ

説得力:★★★☆☆

他国リーグのほうが、国内の戦力に差があるため積極的なターンオーバーをしける。相手が下位であれば直近のリーグ戦の強度も緩いかもしれない。その点においてJクラブは不利になる公算は大きい。

控えの質

説得力:★★☆☆☆

Jリーグは戦力が均衡していることに加え、移籍の流動性も高い。試合に出れない選手はスムーズに移籍の決断をするので、Jのどのクラブもサブメンバーの質は高くない。スタメン組とサブ組の差は他国上位クラブと比べても大きいと感じる。

ベンチ層が薄いということは、二兎を追う体力がないことと同義だ。リーグとACLを完璧に両立できるほど選手層が厚いJクラブはほとんどない。前述のとおりACLはサブ組も多く出場することになるが、そこで力が出せない。

それに対し中国超級リーグやKリーグはあまり拮抗しておらず、上位クラブに良質な選手が集中する傾向にある。

その他

ホームの雰囲気がなかなか作れない

説得力:★☆☆☆☆

ACLはプロモーションに課題を抱えているといわざるをえない。平日開催のACLはお客さんの入りが悪く、ホームの雰囲気が作れない。

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