移籍の仕組み解説!移籍金とは?クラブ間交渉・契約解除金・0円移籍の違い

近年のサッカーの移籍市場においては、目も眩むような巨額の金銭が飛び交っている。例年過去最高の資金が投じられる傾向にあり、選手の価値は日に日に増すばかりだ。

歴代の移籍金ランキングに目をやると、そのほとんどがここ数年のものだ。

・ネイマール(バルセロナ→パリ・サンジェルマン):2億2200万ユーロ(17/18季・夏)
・コウチーニョ(リバプール→バルセロナ):1億2000万ユーロ(17/18季・冬)
・デンベレ(ドルトムント→バルセロナ):1億500万ユーロ(17/18季・夏)
・ポグバ(ユベントス→マンチェスター・U):1億500万ユーロ(16/17季・夏)
・ベイル(トットナム→レアル・マドリー):1億100万ユーロ(13/14季・夏)

今後も世界中のサッカーファンの熱い視線が、ピッチだけでなく移籍市場にも注がれることだろう。

ところで、サッカーの移籍形態というのは少し紛らわしい。移籍ニュースのコメント欄などを見てみると、クラブ間交渉とバイアウト移籍の違いがよく解っていない人も多いようだ。そのあたりの曖昧な「今さら聞けない移籍の仕組み」を解説してみよう。

移籍金とはなにか?

移籍金は、選手が稼ぐ年俸(年収)とは別モノ

例えば世界最高の選手であるメッシは、所属クラブのバルセロナから年俸4200万ユーロを得ている(それに自身のビジネス収入なども加えたものが年収だ)。年俸は選手の実力を示す数字でもあるのだが、移籍金とはまた別である。

移籍金とは

移籍金とは、選手を商品に見立てて、移籍先クラブが選手保有クラブに支払うお金である。原則として選手が貰ったり払ったりするものではない。

もう少し詳しく言うと、移籍する選手が所属クラブとの契約期間中であるにも関わらず移籍することになった場合に発生する”契約破棄の違約金”のことだ。原則として、契約期間が切れた選手の移籍に際しては移籍金は発生しない。

押さえておかなければならないのは、欧州では選手と契約する際に複数年契約が当たり前である点だ。そして大抵の場合、契約は満了になる前の段階で更新される。つまり優秀な選手は常に契約年数を数年先まで残し続ける。30代半ばのベテラン選手は例外として、一流選手の契約が満了になることは少ない。

したがって、欧州におけるほとんどの大型移籍で移籍金が発生することになる。

移籍形態を3パターンに分類

パターンA:クラブ間交渉

選手保有クラブと移籍先クラブとの交渉が合意に達し移籍するケースだ。選手、選手保有クラブ、移籍先クラブの三者の同意が必要である

移籍金は、基本的に選手保有クラブの言い値で決まる。したがって選手保有クラブは、推定市場価格に近似しつつなるべく高い移籍金を獲得しようとする。

(例えばのケースで)おおまかな流れ

・ユベントスは選手Pとの契約を2年残している。
・マンチェスター・Uが獲得オファーを出す。選手Pも一定の移籍意思がある。
・交渉開始。ユベントスが移籍金を提示する。マンチェスター・Uが了承する。
・マンチェスター・Uと選手Pとの契約も同意が得られる。
・選手、選手保有クラブ、移籍先クラブの三者の同意が成されたことになる。移籍が成立する。

クラブ間交渉での近年の移籍事例

・ほとんどの移籍がこのケースである。
・ポグバ(ユベントス→マンチェスター・U)

パターンB:契約解除違約金(バイアウト移籍)

選手が所属クラブと契約を結んだ(更新した)際に、その契約内に契約解除条項が記載されていることがある。バイアウト条項と呼ばれる。

それはすなわち、契約解除金さえ用意があれば、クラブまたは選手が一方的に契約を解除できることを意味する。この仕組みを利用して移籍が成立する場合がある(バイアウト移籍と呼ばれる)。近年の例ではネイマールのパリ・サンジェルマンへの移籍がこれに当たる。

この移籍形態の特徴として、選手と移籍先クラブの同意のみがあれば移籍が成立する。選手保有クラブの同意は不要であり、設定されている契約解除金額が支払われればノーとは言えない。

バイアウト条項の有無についてだが、労働法などの関係でスペインやイタリアではバイアウト条項がつくことが一般的だ(ただし天文学的金額に設定することで、事実上のバイアウト条項無しにすることもできる)。

その性質上クラブとしては、選手との契約時にバイアウト条項はなるべくつけたくないものだ。つけるにしても、なるべく高い金額に設定したい。ただし、ステップアップを目論む選手側の意向としては移籍の自由が効くため低い金額としたい。そこでの交渉によって契約解除金の額は決まる。特にスモールクラブなどでは、高い年俸を支払えない代わりに、安い契約解除金をエサに選手側を説得し契約する場合がある(レスターのカンテの例。レスターで大活躍したシーズン末に、推定市場価格よりかなり安い契約解除金でチェルシーに移籍)。

ちなみに、バイアウト条項には「移籍先はCL出場クラブに限定」など細かいオプションが付く場合ある。

(例えばのケースで)おおまかな流れ

・バルセロナは選手Nとの契約を2年残している。契約解除金が2億ユーロに設定されている。
・選手Nはパリ・サンジェルマンに移籍意思がある。契約にも同意が得られる。
・パリ・サンジェルマンが契約解除金2億ユーロを支払うことで、バルセロナと選手Nの契約は解除される。移籍が成立する。

バイアウト条項での近年の移籍事例

・ネイマール(バルセロナ→パリ・サンジェルマン)
・イグアイン(ナポリ→ユベントス)
・カンテ(レスター→チェルシー)

パターンC:0円移籍(フリー・トランスファー)

前述の「クラブ間交渉」「バイアウト移籍」は、選手の契約期間が残っている場合の話だった。繰り返しになるが移籍金とは、選手が所属クラブとの契約期間中であるにも関わらず移籍することになった場合に発生する違約金のことである。

では契約が満了となった選手を獲得する際はどうなのか。満了となった時点で無所属扱いとなるので移籍金無しで獲得できる。こうした移籍を0円移籍(フリー・トランスファー)と呼ぶ。

往々にしてこの移籍は、ベテラン選手(35歳前後)に多い。クラブとしては将来を見越すと、ベテラン選手との複数年契約はリスクとなるからだ。

若い選手が0円移籍した珍しい例外としては、ドルトムントからバイエルンに移籍したレバンドフスキの例だ。バイエルンはドルトムントにオファーを出し、レバンドフスキ本人も乗り気だったのだが、ドルトムントは断固として移籍を認めなかった。結局レバンドフスキは契約を延長せず、ドルトムントも移籍を認めず、時が過ぎ契約満了となって移籍が実現した。ビジネス的観点から言えばドルトムントは移籍金が発生する段階で売却しておくべきだったのだが、そうしなかったのはクラブの全盛期ゆえにタイトル獲得を優先したのだろう。こうした経営判断は各クラブの自由である。

(例えばのケースで)おおまかな流れ

・バルセロナは選手Cと契約しており、現時点で満了を迎えた。
・選手Cは無所属となり、どのクラブに移籍するも自由である。
・選手Cはパリ・サンジェルマンのオファーを受け移籍が成立する。パリ・サンジェルマンはバルセロナに移籍金を支払う必要はない。

0円移籍での近年の移籍事例

・ピルロ(ACミラン→ユベントス)
・レバンドフスキ(ドルトムント→バイエルン)
・イブラヒモヴィッチ(パリ・サンジェルマン→マンチェスター・U)
・ぺぺ(レアル・マドリー→ベジクタシュ)

おまけ

以上が移籍の仕組みについてのおおまかな解説だ。以下補足。

欧州での移籍ウィンドウ

補足だが、サッカーの移籍においては、FIFAの定めたルールの下に移籍を行える時期と期間が決定している。移籍ウィンドウ(移籍期間)と呼ばれる。夏の移籍期間(7月1日〜8月31日)と冬の移籍期間(1月1日〜1月31日)の2回に制限されている(カッコ内の期間は年度ごとに前後する)。ただし無所属の選手に限っては、0円移籍で移籍期間外でも新しいクラブと契約できる。

移籍金の会計処理

会計上の話だが、一般企業と同じように、クラブが抱える資産と負債の額はバランスシートで示される。移籍金の会計処理については、以下のやりかたが欧州では主流だ。

例えば、下部組織から昇格した選手の場合、バランスシートには何も記録されない。その選手の「金額」がまだ決まっていないからだ。メッシやイニエスタなども、カンテラーノなので会計上は記載がない。

対して他クラブから獲得した選手の場合、支払った移籍金の額が資産として計上され、契約年数によって減価償却されていく。もちろん各クラブのフロント(スポーツディレクター)は移籍金が高すぎる選手の獲得は見送るし、なるべく安い移籍金での獲得を図るが、名目上「移籍金の高い選手」=「価値が高い選手」として会計処理される点は押さえておきたい。

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